ジェジュンのカバーアルバム「Love Covers」の第1曲目。中島美嘉の「愛してる」のカバーだ。
この曲で私は久しぶりに会いたかった彼の歌声に出会った。
鼻腔に響く甘い濃厚な歌声。
ハスキーな高音部を好む人も多いが、私は彼のこの中音域のビブラートのかかった歌声が好きだ。これこそ、唯一無二のジェジュンの歌声だと思う。ハスキーなハイトーンボイスを持つ人は多いが、濃厚で上質のビブラートのある中音域を持つ人は少ない。この歌声こそが彼の真骨頂だ。
この歌は何度も何度も「愛してる」という言葉がリフレインされる。この歌声に使われているのは鼻腔によく響いたミックスボイス。この鼻腔ポジションに当たった歌声が昨年来のCDでは全く聴けなかった。このアルバムに於いても「未来予想図II」「First Love」ではこの歌声は聴けない。その為、発売に先立って公開された音源を聞く限りでは、彼は歌声を意識的に変えたか、それとも機能的にこのポジションで歌えなくなっているのかのどちらかだと思った。しかし、この曲は非常にポジションが良く、若い頃に活動していた歌声と変わらない。ポジションがいい為に安定した歌声で全般に落ち着いた音楽に仕上がっている。またブレス音もそれほど気にならない。これによって彼の安定した歌声の音域は、やはりハイバリトンの音域、即ち中音域であることがよくわかる。
ハイトーンボイスを駆使する歌手の場合、喉のコンディションは中声域の響きが非常に重要になる。この部分の音域の響きに翳りが出た場合は、赤信号だ。反対に高音域がハスキーであっても中声域の響きが綺麗に鼻腔に当っている場合は、高音域の響きのポジションがずれていることによってのハスキーさであり、機能的な不安はない。（ここで言う機能的な不安というのは、声帯そのものの障害、ポリーブや結節に至らないものも含むことを言う）
この曲は「愛してる」の歌詞が何度もリフレインされる。
ジェジュンは何度も繰り返されるこの冒頭の「愛してる」という言葉のタンギングを揃えることで綺麗に全体の音色を揃えている。これはこのフレーズのポジションで全てのフレーズを歌っていることになる。
中音域の安定した音色は彼の場合、非常に綺麗な響きをしており、ハイトーンボイスの曲には消えてしまっていた倍音も復活しているのがわかる。この倍音の響きがあるかどうかが彼の歌声の一つのバロメーターにもなる。
後半のサビの展開部の後半部分「ah 限られる 飾られる 語られる 報われる uhoo 夜になる また朝が来るから」
この部分に彼の最も特徴的な倍音の響きを聴くことが出来る。これ以外の部分では、綺麗で優しい音色に揃えられた音の羅列が続いて行く。
ジェジュンは歌に感情を込めるタイプの歌い手である。それゆえ、歌声のコンディションの影響はそのまま歌唱力に直結する。
この曲に於いては非常に安定したコンディションで歌っている。
「愛を歌う歌手」というコンセプトで日本活動を再開させている彼にとって「Love Covers」というタイトルのアルバムに相応しい第1曲目となっている。彼の「愛してる」という歌声のリフレインが倍音の歌声と共に多くの聴衆の耳に届くだろう。
