「Maze」の最後の歌唱は、2010年6月の東京ドーム。

今から10年前の歌声だ。

ジェジュンは24歳。

当然、伸びもあり、この頃の特徴的な歌声である透明感に溢れている。

しかし、この曲に於ける彼の歌は、非常に男性的で、エネルギッシュ。

従来の歌声に比べると若干野太い歌声になるのが特徴だ。

それは音域の問題がある。

この曲に於ける音域は、若干低めに設定されており、Aメロ、Bメロにおいては彼の歌声はチェストボイス。

即ち、少し地声気味の強い歌声になる。

そのままの響きで、サビも歌われるため、いつもの歌声よりも太めの力強い歌声が披露されている。

 

この曲を今の歌声で歌うとどうなるのだろうか。

 

現在の彼の歌声は、この頃に比べて全体にもっと丸みを帯びている。

特に中音域はもっとソフトで、綺麗な円熟味のある歌声に変わっている。

そのため、Aメロ、Bメロではもう少しソフトな印象の歌声になるかもしれない。

特に日本語のタンギングがもっと柔らかなものになる可能性がある。

 

サビの部分では、少し前の突き上げるような喉声の歌い方なら、ハスキー気味の尖った歌声になる可能性があり、彼がその喉の使い方をせず、現在のようなエアーの流れに乗せた歌い方をするなら、滑らかで伸びのある歌声が綺麗に空中で弧を描くはずだ。

その歌声の色彩は、この頃の歌声よりももっと濃い。

シャウトに関しても、ブレスをフレーズの最後に吐く、という形のシャウト音になり、喉で切った歌い方にはならないだろう。

おそらくフレーズの最後には混濁した響きが残る。

 

 

総じて私達は、曲と共に歌声を記憶している。

最初に聞いた歌声がそのまま曲と共に記憶に刻み込まれるために、年月が経ってから同じ曲を歌われると違和感を覚えることが多い。

しかし、年齢を重ねた歌声は、円熟味が増し、魅力的になっていることも多い。

記憶している歌声と違うからと言って、一概に若い頃の方がよかった、という評価を下すには余りに短絡的だ。

現在の彼の歌声で、過去の歌を聴けるのは贅沢な瞬間と言える。

 

ジェジュンの場合、かつての楽曲を歌うことは難しい問題が横たわっている。

この曲や、自作曲に関しては、そういう問題を解消して、今の歌声で聴ける日が来ることを期待したい。