オリジナルのキーポジションより下げた分、彼の歌の方が大人の雰囲気の音楽になった。

中森明菜の歌が十代の青春真只中の青臭い色調の音楽であるのに対し、ジェジュンの歌はもう少し成熟した二十代以降の女性の歌になった、という印象を持つ。

この点がオリジナルの原曲と最も違うと感じた点だった。

 

この曲に使われている歌声は非常に甘い。

響きのポジションをチェストボイスのポジションに取っていることで、響きが鼻腔に綺麗に当たっており、ほぼほぼ彼の素の音質のままである。即ち、彼の話し声のポジションに近い音質で歌われている。

これはメロディーラインの音域が彼の話し声のキーポジションと同じ音域であることに起因すると考える。

その為に彼の甘い鼻腔に響いた歌声が存分に使われており、彼自身が一番無理なく歌えるキーポジションであるように感じられる。

それゆえ、歌声にはどこにも無理な力が入らず、非常にリラックスした楽な歌声で歌われていると言えるだろう。

また低音域での自然に発生するビブラートがフレーズの終わりに何箇所も現れ、その声が曲全体にさらに甘い音色を与えている。

 

ブレスの流れが非常にスムーズに流れており、たっぷりとした息遣いが全体の歌声を覆っている為、非常にソフトで幅のある響きが作られている。

この音色も東方神起時代の歌声の成熟した音声であると感じられる。

東方神起時代には、このようなどこにも力みのない自然な発声によるソフトな歌声が主流だった。その頃の歌声に非常に似ていると感じた。

 

どこにも力みのない歌声は彼の持ち味であり、その発声法が高音部にも現れるとエアーの流れに乗せて声を高く放り上げる彼独特の伸びやかな高音部になる。

そういう流れを感じさせる歌声であり、発声法が根本から修正されてきているのを感じる一曲だった。