wacciの楽曲「別の人の彼女になったよ」はどこにでもいそうな若いカップルの別離の話を連想させる。
明るくたくましくてちょっぴり未練のある女の子の微笑ましい話を思い起こさせる。
ところがジェジュンがカバーすると途端にその曲はもっと大人の女性の話になる。
都会的で乾いた空気感のちょっと切ない女の話になるのだ。
それぐらい楽曲というのは、歌手によってその楽曲に抱くイメージが変わる。
ジェジュンの歌うカバー曲というのは、オリジナルの歌い方を踏襲しながら、楽曲に新しいイメージを吹き込む力を持つものだということをこの曲を聴いてあらためて思った。
この曲の出来は非常にいい。
そして、この曲の彼の歌声の状態も非常にいい。
久しぶりに伸びのある中音域であり、高音域も非常に伸びやかだ。
ポジション的にはフロントポジションに響きがきちんと嵌っており、一時感じた突き上げるような歌い方は全くない。
必要以上にブレスを混ぜて歌うウィスパーボイスも影を潜め、綺麗に全てのブレスが歌声に転換されている。
自然でどこにも力の入っていない歌声は、低音域、中音域においても伸びと弾力性を感じさせる。
非常に充実した歌声であって、先日より聴いている過去の透明感溢れる歌声よりも、ずっと大人の成熟した充実感がある。
この曲の歌声は、彼の持ち味のビブラートの歌声を一層魅力的にしている。
個人的には今の歌声の方がずっと好きだし、久しぶりに彼本来の歌声になったと感じる。
声帯の状態が良く、この歌声をキープ出来るなら、歌声に関してはいう事がない。
さらにこの曲で感じたのは、日本語が明確になった事だ。
この曲は言葉数がかなり多く、それに対し、音楽の流れが比較的ゆっくりしている。
ということはどういう事が起きるかと言えば、言葉を明確に発音しなければ言葉の音節がバラバラになり、文字化して何を歌っているか分からなくなりやすい、ということになる。
しかし、今回、ジェジュンの日本語は今までの楽曲の中で一番と言えるほど明確である。
これは意識的に口角と唇をしっかりと動かし、言葉の発音のエッジを深く切り込んで、言葉が音楽に呑み込まれて流されてしまわないように、ある部分ではしっかりブレーキをかけ発音している証拠と言える。
この部分に於いても、彼のこの歌は非常にいいと感じる。
彼の歌は、今まで「上手い」と思うことはあった。
しかし、「いい」と思ったことはなかった。
「上手い」というのと「いい」というのは別物だ。
それはこんなに切ない心情を歌っているのに、彼の歌には今までのような深刻さがないからだ。
明るく軽い歌からは、今までのように主観的に主人公に同化する歌より、ずっと切なさを感じさせる。
これが今までの彼の歌にはなかったスタンスだ。
「別の人の彼女になったよ」は、ジェジュンの歌手としてのステージを確実に一つ押し上げた。
軽く客観的に歌を紡げる歌手へと進化させた。
そう思った。
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