尾崎豊のカバー曲。

ジェジュンがカバーする曲の中で最も高い評価を受ける楽曲の1つ。

この日の彼の歌声はアルバムに収録されている同曲の歌声よりももっとジェジュンらしい歌声になっている。

 

この曲のカバーは2018年後半のツアー「Secret Road」で披露されたが、この時の歌声はもっと尾崎豊に近い響きのもので、かなり尾崎豊の歌声を意識したものになっていたのが印象的だった。

尾崎の野太い歌声に似通った音色を作り上げるのに、胸声(チェストボイス)のポジションにエッジを深く切って響きを当てて発声していたように記憶している。そのため、彼自身が持つ歌声の響きは殆ど感じられなかった。

その後、収録されたカバーアルバムの歌声には、ツアー当時ほどの尾崎豊らしい響きは少なかったが、それでも低音域での響きには彼本来の歌声の響きをわざと太く響かせて作り上げた声を用いている。

 

しかしこの日の歌声はそれを全く感じさせないジェジュン本来の歌声だ。

彼本来の歌声であっても十分に尾崎豊の音楽を感じるのは、彼が言葉の一つ一つに魂を込めて歌うからに他ならない。

「言葉に魂を込める」ことこそが、尾崎豊の音楽の大きな特徴であり、心の叫びとも言える尾崎音楽の原点の1つだ。

その尾崎音楽の根っこにある感情の迸りを言葉に載せて表現する、という点が、ジェジュンの歌との共通項であり、だからこそジェジュンが彼本来の歌声で尾崎豊の楽曲を歌っても、そこに十分尾崎音楽を感じることができる所以とも言えるだろう。

 

この日の彼の歌には、彼本来の綺麗な歌声の響きが随所に見られ、尾崎豊の歌声を意識したものは姿を消している。

彼が自分自身の歌声で尾崎の世界を表現しようとする意思が感じられると共に、それを行えるのは、彼自身が完全にこの曲を自分のものとして消化しきった証拠であり、「Forget-me-not」がジェジュンのオリジナル色に彩られた瞬間でもある。

 

この曲を歌う時の彼の集中度はファンの掛け声をものともしないほど半端なく、それゆえに彼がアーティストであることの証明とも言えよう。

 

「化粧」「僕が死のうと思ったのは」など、彼が楽曲の世界に同化し、演技者としての能力を発揮する時、必ずそこには誰も入っていくことができないほどの高い集中力を見せる。

この集中力こそが歌手ジェジュンがカバー曲で高い評価を受ける大きな理由と言えるだろう。

 

7月末には再び、カバー曲のアルバム「Love Covers2」が発売される。

そこで彼がどのように自分の世界を構築しているか非常に興味深い。

2年の日本活動がどれだけの進化を彼に遂げさせたのか、楽しみにしている。