ドリカムのカバー曲「未来予想図II」だ。

もうあちこちの音楽番組でも歌い、彼的にかなり歌い込まれた曲である。

それゆえこの日の歌声は非常に安定している。

すっかり曲を自分のものとして消化しきっている余裕が言葉の処理の仕方、フレーズの切り方などに現れ、非常に流暢で穏やかな音楽の流れの世界が表現されている。

 

吉田美和の歌う「未来予想図II」には、もっとエネルギッシュで現実的な世界が感じられたが、彼の歌う「未来予想図II」はどこまでも優しい。優しくノスタルジックなセピア色の世界が拡がっている。それはほぼ音色を消し去った歌い出しの無色な音声に感じることが出来る。

吉田美和の世界が1シーンごとに区切られたものであるのに対し、ジェジュンのそれは全てのシーンが繋がって、一枚の絵のように完成された場所だ。それだけレガートを多用して滑らかに音を処理をしているのを感じる。

 

この曲の歌声は綺麗に鼻腔に当たっており、高音部は突き上げるような歌い方にはなっていない。全体的にソフトで綺麗な歌声が披露されている。

アルバムに収められた歌声よりもずっと響きの状態がいい歌声になっているのが特徴的だ。

 

彼がこの曲に自信を持っているのが感じられる。

この曲は既に吉田美和の手を離れ、ジェジュンの歌になっている。

これがカバー曲を自分のものとして提示できるかどうかの分かれ道である。

どこまでも歌い方やタンギングの仕方など、オリジナルの歌い方に影響されて物真似の歌声になるのか、それとも自分の曲として一旦オリジナルの歌声を白紙に戻し、自分の色を塗り直していく作業ができるかどうか。

カバー曲を自分のものにできるかどうかは、その歌手の持つオリジナル性にかかっていると私は思う。

そういう点で、ジェジュンはカバー歌手の域を十分越え、楽曲に独自の色合いを与えることのできる歌手であると言えるだろう。

それがこの人の歌手としての優れた点である。

 

 

昨年11月に幕張メッセで行われたライブ音源が昨日から公開されている。

おそらく「Brava!!Brava!!Brava!!」のスペシャル盤発売日である10日まで毎日一曲ずつ公開されると思われるので、それに合わせてレビューを書きたいと思っている。

前回のライブ音源のように、1日の公演の中で彼の歌声に変化があるのかないのかということも含めて検証したいと思う。