昨年11月に二日間だけ開かれたカバーアルバム「Love Covers」のライブから。
「愛してる」は中島美嘉のカバー曲でアルバムでも冒頭の曲である。
この日の彼の歌声は前回のライブとは全く異なり、非常に安定したポジションで歌われている。
「日本語の勉強をし始めたとき、よく歌っていた」というだけあって、楽曲を完全に消化し、ジェジュンの「愛してる」になっている。
優しい中音域の歌声は、少しハスキー気味ではあるが響きは悪くない。鼻腔内に響きが留まり、ブレスの循環がよく、たっぷりとしたブレスの流れに歌声が載せられている。
非常に華やかで煌びやかな甘い音色をしている。
言葉のタンギングが非常に優しい。
この曲のタンギングを聴く限り、彼の日本語の発音が外国人のそれではなく日本人と同じ発音ポジションになっているのを感じる。即ち、子音のタンギングが強くなく、ソフトなタンギングになっている点。
これは日常的に日本語を使う中で、彼の日本語の発音がネイティブに近づいていることを証明している。
それゆえ、日本人の日本語の発音の曖昧さまでもが顔を覗かせそうになるぐらい、流暢な自然な発音になっている。
最近、様々な歌手がカバー曲を歌うのを耳にする機会が増えたが、カバー曲を歌う難しさは、如何にオリジナルのイメージを大事にしながら、自分らしさを表現できるかにかかっていると思う。
そういう点で、この曲のように男性が女性の曲をカバーする時、そこには既にオリジナルのイメージを損なう危険性を孕んでいるのだが、彼の場合、決してそういうことにならない。
これは彼の歌声が持つ「中性性」にあると思われる。
この曲もそうだが、彼が女性歌手の曲をカバーする時、音域的なこともあって、彼の歌声は女性のアルトの歌声に近い音色を持つ。
これが彼の歌声の中性的な部分を浮き上がらせ、男性歌手が歌うことの違和感をいとも簡単に乗り越えてしまう理由である。
即ち、歌手ジェジュンの歌声はジェンダーレスなのだ。
これが彼のカバー曲の強みと言える。
「愛してる」もそういう彼の歌声の特性を十分生かした楽曲になっている。
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