リクエストを頂いて、歌手のまふまふの歌を数曲、聴いてみた。

私が聴いたのは2019年アルバム「神楽色アーティファクト」2020年シングル「それを愛と呼ぶだけ」

 

男性でありながら趙ハイトーンボイスの持ち主だ。

低音域はあまり広くない代わりに、高音域が女性並みに広い。

低音域から中音域の中間あたりまではミックスボイス。中音域の高音から高音域はミックスボイスからヘッドボイス、さらにファルセットの芯を集めた歌声になっている。

本人がライブ前に声帯を専門医に診てもらったところ、「女性に近い声帯」と言われたと話しているのは、その構造が女性の声帯のように細く粘膜が薄いのではないかと思われる。

また高音がこの1年、出にくいと感じていたが結節が出来ていた、とのことで薬を飲んだら、一気に改善し、声が出やすくなった。但し、ライブが終わったら精密検査をするとのことで、おそらく緊急処置としてステロイド剤が投与されたのだと想像できる。ステロイド剤は、声帯を緊急的に改善し、伸縮を良くするので、歌手やミュージカル俳優なども、声の調子が良くない時や、突然、声が出にくくなった時、本番前などの応急処置として使用することが多い。(ただ、非常に強い薬なので、多用や常用は危険であり、根本的な治療薬にはならない。ステロイ剤を多用すると副作用として、声帯が弛緩してしまい反応しなくなったりする場合がある。)

彼の歌声だけでなく、話し声を配信の動画で確認すると、持ち声の特徴が非常によくわかる。

元々、話し声が既に高音であり、鼻腔のポジションに響いている。また歌声は完全に顔の前面に抜けており、フロントボイス。

そうやって前面に抜かなければ、あれほどの高音を出すことが出来ない。

元々の持ち声のポジションもノーズポジションに当たっているので、そこから高音域に声を伸ばしていくのは、彼にとってはそれほど苦労することではなかったように思う。全体的に非常に細い声の持ち主で、高音は響きの芯だけを掴んで、眉間に抜いている。

楽曲はどれもテクノポップス調で、アップテンポの印象が強かった。

 

ニコ生配信から出た歌手で、米津玄師の次に信奉者が多いと聞いた。

年齢的に今が一番高音が出る年代だと思うが、20代で既に結節が出来ているというのは、彼の発声がかなり声帯に負担をかけている証拠でもある。

ヘビメタやロックなども歌っている様子なので、このままの超高音域ばかりを使っていると声帯に障害を起こす懸念は免れない。

 

最近、問題になっているJPOPの楽曲の低音域から高音域までをアップテンポで細かい音符で刻むメロディーの作り方が、歌手に声帯炎を多発している典型的な楽曲になっているのが心配な部分でもある。

 

彼の声もまた唯一無二の歌声であり、ファンにとっては宝物のようなものだろうから、若さに任せて声帯に負荷をかけすぎることだけは避けて欲しいと感じる。

作曲や作詞、編曲などクリエイトな分野に多才な能力を持つ人のようなので、彼が長く歌い続けたいと思っているかどうかは疑問だが、もし、歌声を失いたくないと思うなら、自分の声を労り、負荷をかけない楽曲を作ることをボイストレーナーの見地から勧める。

 

今後、彼が年齢を重ねるに従って、どのようにその歌声が変化するのか、聴いてみたい気がした。