4月27日は東方神起の日本デビュー15周年だった。

リクエストを頂いて、2人で歌った「明日は来るから」を聴いてみた。

 

この曲は元々5人の東方神起の曲で、後に2人で録音し直している。

今では東方神起が5人だったということも知らないファンの方が多いのではないかと思えるほど、東方神起のイメージは2人に依って大きく塗り替えられたと言っても過言ではない。

私は5人の頃の東方神起の最後の数曲をリアルに聴いていた1人として、その後の分裂、それぞれのグループの歩みなど私なりに見てきた。その中で感じるのは、5人の東方神起がボーカルグループだったのに対し、2人の東方神起は、ダンスに重きを置いたグループであるという点が大きく異なるように感じる。さらに2人の東方神起はJPOPジャンルでありながら、その音楽形態はKPOPに近い。

ダンスチューンを中心とした楽曲展開が多く、バラードはそれほど多くない、という点でかつての東方神起とは大きくイメージを変えている。その分、以前より躍動的で男性的なイメージのグループになったと感じる。またあくまでも日本のグループとして作り替えた以前の東方神起に比べると、現在の東方神起は、韓国のグループであるという側面を残したまま、JPOPを歌っているという印象を持つ。そこがかつてのグループとの大きな違いと言えるかもしれない。

それは、15年前には日本ではKPOP音楽は全く受け入れる土壌がなかったのに対し、この15年でKPOPというジャンルが日本の音楽界の中に確立され、1つの音楽形態として社会的地位を獲得したことが大きな原因のように感じる。

即ち、韓国のグループが日本で活動する場合に、JPOPの音楽形態に拘らなくても、自国のKPOP音楽をそのまま持ち込める土壌が日本に出来上がっているということが、東方神起の音楽形態を変える誘因になっていると考える。その傾向は、彼らが除隊後、特に強くなったように感じる。

そういう流れの中で、彼らはかつての楽曲を自分達で歌い直すという試みをしている。それは、彼らが過去の楽曲を新たに自分達2人のデュエット曲として作り替えていくことで、東方神起としてのJPOP分野を確立しようとする現れのように思う。

 

前置きが長くなったが、「明日は来るから」は、ミディアムバラード。

歌い出しはユノ。この人はこの15年で格段に歌が上手くなった。

特に分裂後の彼の歌唱力は長足の伸びを見せている。

この人は元々、音域が低く、高音域を担当してこなかった。それが2人になった途端、そうも言ってられなくなり、高音域も歌うことが要求される。そのためにこの人は発声を根本から見直したのだということが今回、この曲を聴いていて気づいた。

以前の地声の歌声が消え、ブレスを多用したフロントボイスのポジションに発声が移行している。そのためにかつて地声で鳴りの良かった低音域の音色は完全にソフトな音色にチェンジしている。この発声のまま、中・高音域へと移行するために、彼の音域はかつての音域よりも飛躍的に伸びたと感じる。

全体にソフトな音色が占めるが、高音域のサビの部分になると非常に鳴りのいい芯のある音色のストレートボイスになる。これが今の彼の歌声の魅力だろうと感じる。

 

冒頭のフレーズを受け取る形で歌い出すチャンミンの歌声は、かつて聴き慣れたこの人の歌声と印象は変わらない。ただ、大きく変わったのは歌い方だ。

この人はかつて非常に鳴りのいい叫ぶような高音部のシャウト音を多用した歌い方が目立った。それはある意味、高音を身体のバランスで支えきれないために断ち切りのシャウト音で歌う、というどちらかと言えば、少し乱暴な歌唱、よく言えばエネルギッシュな断ち切りの歌い方が特徴的だったが、この曲においては、そういう歌い方は全く影を潜めており、全体にユノの声に合わせたソフトな色調になっている。

2人で歌うデュエット音楽の場合、音色を合わせるか、反対にそれぞれの個性を主張するかのどちらかであるが、この2人は音色が似通っている。その為、彼は、タンギングやフレーズの切り方などをユノと合わせるという歌い方に変えている。あくまでも自分を主張するのではなく、2人の音楽を確立する、という考えが、彼の歌い方を変化させたと感じる。

 

 

5人の多重音楽の構造から、2人のデュエット音楽に移行した形で、かつての楽曲を歌う場合、かつての音楽を聴き慣れた人間が抱きがちなサウンドの厚みの物足りなさという側面を、彼らは2人の音色を合わせ、色彩の統一感を出すことで、全く違った印象の楽曲に作り替えることに成功している。

この2人の音色が似通っている点は、ハーモニー音楽を作り出す点で、欠点にもなりがちである部分を、「統一感」「一体感」という形にハーモニーを作り上げていくことで、見事に克服し、2人の東方神起の音楽の世界というものを作り上げている。

これが現在の東方神起が大きな人気を保ち続けている部分であり、あくまでもグループ音楽の確立という点を頑なに守り続けてきた彼らの血の滲むような努力の結果と言える。

 

私はかつての彼らの歌の実力を知っている人間として、彼らが「東方神起」というものを守り抜くためにどれほどの努力をしてきたかということを、現在の彼らの歌唱力から推察することが出来る。

分裂後の彼らの努力は筆舌に尽くし難く、決して諦めることなく続けてきた、という点で、様々な雑音や思惑が聞こえる中でも、大きな評価に値すると感じる。

 

 

 

東方神起は、今日から16年目の歩みを始めた。

多くのグループが解散していく中で、これだけの長い間、グループ音楽を継続している彼らは、まさにその分野のパイオニア的存在であり、日本の音楽業界の中で、一つのジャンルを確立している。

彼らがこの先、どのような音楽の世界を確立し、アーティストとして進化していくのか、日本の業界の中での存在感をどのように変化させていくのか。

 

16年目の歩みは始まったばかりだ。