「白雲の城」「男の絶唱」と彼の演歌を聴いてきて、彼の演歌をもう少し聴いてみようと思った。

私は彼の演歌をよく知らないから、上記の2曲も何となくインスピレーションで選んだだけである。たまたま彼のストレートボイスと演歌の歌声の組み合わせによる曲だったり、ストレートボイスで歌われた歌だったりで、彼の歌声が実は大きく2種類に分類されるのだと分かった。

コンサートのセトリを見ながら、演歌のセトリの中でなんとなく選んだのが、この曲。

調べてみると去年春のリリースだった。

 

この曲は全編、彼の演歌の歌声で覆われている。

冒頭からサビの高音を張り上げて歌うフレーズまで、どこにもストレートボイスの影も形も感じられない。

 

彼の演歌での歌声の特徴は、鼻腔によく響かせた歌声であるということ。

発声のポジションが鼻腔であるという点においては、フロントボイスのポジションなのだが、彼の場合、そこに声を当ててから、鼻腔に響きを入れて発声している。その為に、響きが非常に濃厚な音色になり、ややもすれば鼻声に近い程の鼻腔の響きになる。そうして作った声を鼻腔にポジションを置いたままで、ロングトーンのときに声帯を振動させ、こぶしを付けている。

ロングトーンの響きに振動を与えることで、鼻腔の響きを残したまま、こぶしがつくのだ。そうすることで濃厚な色艶の良い歌声が誕生する。またフロントボイスではブレスを顔の前面に流し、息の流れを作っておいて、そこに歌声を乗せていくが、彼の場合は、息の流れに乗せて前へ飛ばさない。演歌を歌う場合は、息の流れを前ではなく身体の内側に流すことで鼻腔の奥側に声を回している。そうすることで、響きを濃厚に保ったまま、音程を上げていく。

演歌の時の彼の歌声は、非常に艶があるが、決して息の流れで顔の前方へは飛ばない発声になっている。

これがポップスを歌う時の発声法と全く違う部分だ。

同じ声帯を使いながら、声を当てる場所を変えることで、全く色味の違う歌声を作り上げている。

これが出来るのは、彼の元々の声が鳴りのいいストレートボイスであるからに他ならない。

彼は二つの音色をジャンルによって使い分けている、ということになる。

このような発声が出来ているのが、いつ頃からなのか、私にはわからないが、数年前から何年間か、彼は歌声が不調で特に高音域に陰りが出ていたのが、ポリープの手術をしてから高音が戻った、という話をどこかで読んだ記憶がある。

もしかしたら、その時にきちんとボイトレをし直したのかもしれない。

 

いずれにしても、今回、彼の演歌を聴いてみて、彼の歌声の種類が非常によく分かった。

彼の歌声は今、絶好調だ。

だからこそ、この時期のジャンルの転換が可能なのだと思った。

 

誰もが出来るわけじゃない。

氷川きよしは、歌手としてまだまだ伸びる要素が十分にある。

そう思った。